遺留分侵害額請求と不動産評価 不公平な相続から正当な権利を取り戻すための算定基準
今回は、遺産の遺留分(いりゅうぶん)侵害額請求と不動産評価について。
「親の遺言書に『すべての財産を長男に譲る』と書かれていた。次男の私は一円ももらえないのだろうか」
「不公平な遺言によって法定相続人が一銭も財産を受け取れない場合、どうすればいいのか」
弁護士案件に特化した不動産会社である当事務所には、このような遺言や遺産分割を巡る深刻なトラブルのご相談が数多く寄せられます。
特定の親族だけにすべての財産を相続させるような不公平な内容であっても、残された法定相続人には法律上、最低限の遺産を受け取る権利が保証されています。これが「遺留分」です。
そして、この遺留分を巡る争いで最も複雑な火種となるのが、遺産の中に「不動産」が含まれているケースです。不動産は現金と違って見る人によって価値の判断が分かれるため、その評価額をいくらにするかによって、請求できる金額が何百万円、何千万円も変わってしまいます。
今回は、遺留分侵害額請求の仕組みと、命取りになりかねない「不動産評価」の重要性、具体的な計算・請求の流れを専門家の視点から分かりやすく解説します。
1. 遺留分侵害額請求とは?
遺留分侵害額請求(いりゅうぶんしんがいがくせいきゅう)とは、遺言や生前贈与によって自分の遺留分(最低限保証された相続財産の受け取り割合)が侵害された場合に、多くの財産を得た人に対して「侵害された分の金額を金銭で支払ってください」と請求できる権利です。
重要なポイント 法改正により「お金」での請求に一本化
2019年(令和元年)の民法改正により、それまでの「遺留分減殺請求(物件そのものの権利を返せという請求)」から「遺留分侵害額請求」へと制度が変わりました。
これにより、現在は実家などの不動産そのものの共有名義を求めるのではなく、「不動産の価値を含めて計算した、侵害された額に相当する『金銭(現金)』を請求する」というルールに一本化されています。
なお、遺留分を持つのは配偶者、子供(直系卑属)、親(直系尊属)であり、被相続人の兄弟姉妹には遺留分がありませんのでご注意ください。
2. 不動産の「評価時期」と「評価基準」
遺留分侵害額請求を行う際、不動産の価値を「いつの時点」の「どのような基準」で査定すべきかは法律で厳格に定められています。
ここを間違えると、相手方から正当な反論を受けて請求が認められなくなってしまいます。
① 不動産の評価時期は「相続開始時(被相続人の死亡時)」
不動産の価格は日々変動しますが、遺留分の計算の基礎となる不動産の評価時期は、「被相続人が亡くなった時点(相続開始時)」の時価です。
例えば、親が亡くなったのが2年前で、その後周辺の開発によって土地の価格が急騰していたとしても、請求金額の基準となるのは「2年前の死亡日の価値」となります。
② 評価基準は「実勢価格(時価)」
相続税を計算する際は「路線価」や「固定資産税評価額」といった公的な指標が使われますが、遺留分侵害額請求における不動産評価は、原則として「実勢価格(実際に市場で売買される取引価格)」を用います。
一般的に、実勢価格は路線価や固定資産税評価額よりも高く設定されることが多いため、請求する側(遺留分を侵害された側)にとっては、実勢価格できちんと評価することが極めて有利に働きます。
3. なぜ遺留分侵害額請求では「不動産の評価方法」が大切なのか?
遺留分侵害額請求の成否、そして手元に戻ってくる金額を大きく左右するのが「不動産の評価方法」です。
なぜなら、不動産の価格算出には複数のアプローチがあり、立場によって主張したい金額が真っ向から対立するからです。
- ・財産を多くもらった側(請求される側)支払う現金を少なくしたいため、不動産の価値をできるだけ低く見積もろうとします(固定資産税評価額などを主張しがちです)。
- ・財産をもらえなかった側(請求する側)受け取る現金を多くしたいため、不動産の価値をできるだけ高く(正当な時価で)見積もろうとします。
ここで、一般の不動産会社が発行する「無料の売却査定書」をそのまま裁判や交渉に持ち込んでも、相手方の弁護士から「売るための見込み価格に過ぎず、客観的な根拠がない」と一蹴されてしまうケースが後を絶ちません。
だからこそ、相手方や裁判所(調停委員)を納得させるだけの「論理的な整合性」と「客観的な取引事例」が明記された、弁護士案件に耐えうる専門的な査定報告書、あるいは不動産鑑定士による鑑定評価書が必要不可欠となるのです。
4. 不動産がある場合の遺留分の計算・請求の流れ
実際に不動産が絡む遺留分侵害額請求を進める際の手順は以下の通りです。
ステップ1 不動産の客観的な価格(時価)を調べる
まずは当事務所のような弁護士案件に特化した専門会社へ相談し、被相続人が亡くなった時点における不動産の正確な「実勢価格」を算出します。
ステップ2 遺留分侵害額の計算
判明した不動産の価格に、現金や預貯金、株式などを合算し、そこから被相続人の債務(借金)を差し引いて「遺留分算定の基礎となる財産額」を出します。
これに自身の遺留分割合(一般的な子供の場合は法定相続分の2分の1)を掛け合わせ、最終的な請求額を決定します。
【計算例】
遺産が「実勢価格4,000万円の実家」と「現金1,000万円」で、長男がすべてを相続。次男(遺留分割合は1/4)が請求する場合。
・財産総額 4,000万円 + 1,000万円 = 5,000万円
・次男の遺留分額 5,000万円 ×1/4 = 1,250万円
次男は長男に対し、1,250万円の金銭を請求できます。
ステップ3 相手方への請求(内容証明郵便の送付)
遺留分侵害額請求には「相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間」という非常に短い時効があります。
期限内に確実に請求した証拠を残すため、弁護士を通じて内容証明郵便で意思表示を行います。
ステップ4 話し合い(交渉)から調停・訴訟へ
査定報告書を証拠として提示し、相手方と金銭の支払いについて交渉します。
話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所へ「遺留分侵害額の処分による調停」を申し立て、最終的には裁判(訴訟)によって決着をつけます。
まとめ 不動産のプロと弁護士の連携が勝利の鍵
遺留分侵害額請求は、単なる法律の知識だけでなく、「不動産の正しい価値をいかに証明するか」という戦いでもあります。
いくら法律論で勝っていても、不動産評価のベースが低ければ、取り戻せる金額は不当に低くなってしまいます。
当事務所は、弁護士案件に特化した不動産会社として、法的な紛争や裁判に耐えうる高精度な不動産査定をスピーディーに行っています。
提携する弁護士と密に連携し、あなたの正当な権利と財産を取り戻すための強力なバックアップをいたします。
「不公平な遺言書が見つかった」「相手方の提示してきた不動産の価格が安すぎる」とお悩みの方は、時効を迎えてしまう前に、ぜひ当事務所へご相談ください。